糖鎖科学研究室

バイオエコノミーの主役 “糖”!
糖のポテンシャルを引き出すバイオテクノロジー
糖は地球を救う!
教員名:教授 金子 哲 (かねこ さとし)
所属:亜熱帯生物資源科学科 生物機能開発学分野
専門分野:糖科学、酵素科学
研究内容
お砂糖だけが「糖」ではありません。
植物は光合成によって空気中の二酸化炭素から糖を作り出します。植物が作る糖の中で、最も生産量の多いものが細胞壁です。植物細胞壁は年間生産量約1,500-2000億トンと言われており、地球上に最も多く存在するバイオマス資源として知られています。植物細胞壁は、空気中の二酸化炭素から作られたものですから、燃やしても地球温暖化ガスを増加させることはないため、地球環境に優しい原料です。
当研究室では、植物細胞壁の成分のうち、利用が敬遠されている「ヘミセルロース」という成分に焦点をあて、ファインケミカルや食品・化粧品素材、健康食品、生分解性プラスチック、植物生長促進剤等の広範な用途にヘミセルロースを利用するための技術を開発する研究を行っています。
主な研究内容
糖質関連酵素(CAZy)の構造機能相関の解析
ヘミセルロースは、複数の構成糖を含むことが特徴で、構成糖の種類・分岐構造が植物種や植物の生長段階・部位により異なるため、均質な素材を作りにくく、利用が困難です。
バイオ燃料の原料として期待されるセルロースはヘミセルロースに覆われているため、ヘミセルロースを除かなければセルロースを糖化することはできません。通常のバイオ燃料製造プロセスにおいては酸・熱を利用してヘミセルロースを完全分解して取り除く方法が行われていますが、この方法では、ヘミセルロース分解物を発酵原料として利用することしかできないため、ヘミセルロースの利用可能性を狭めています。また、ヘミセルロースはペントース(5炭糖)を主成分とするため、発酵には適していません。
そこで、当研究室では「酵素」を使ってヘミセルロースを分解します。酵素は、ある特定の構造のみを認識して、反応を触媒する分子であるため、極めて高い構造選択性を有しています。酵素の性質、立体構造を色々な視点から見ることで、ヘテロな構造をしたヘミセルロースから均質な素材を得ることが可能になります。
上に示したのは当研究室で研究に用いている放線菌の生産するキシラーゼの構造ですが、このキシラナーゼは酵素活性を持つ触媒ドメインと基質に結合する基質結合ドメインから構成されています。触媒ドメインは糖加水分解酵素に非常に多く見られる(β/α)8-バレル構造、基質結合ドメインは植物のレクチンと同じ構造をしていました。立体構造の情報をもとに基質特異性を決めているメカニズム、酵素の安定性のメカニズムなどについて調べています。
その他、数多くのヘミセルロース分解酵素や海藻多糖の分解酵素について、研究を行っています。
オリゴ糖の製造と機能の評価
性質の明らかになったヘミセルロース分解酵素を組合わせ、様々な構造のオリゴ糖を製造し、食品素材、健康食品、生分解性プラスチック、植物生長促進剤等の広範な用途におけるヘミセルロースの利用可能性を検証していきます。
最近の業績

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